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骨の検査・解析法の解説

骨の検査・解析法の解説

1.骨検体の処理方法

処理方法

以下の1.~3.は、原則として、ご依頼主様にお願いする作業です。実験の目的や対象によっては異なる処理が必要なことがありますので、是非予めお問い合わせください。

1-1.骨標識剤の投与

この作業は骨の非脱灰標本作製後の骨形態計測のための作業です。これを目的にしない場合は必要ありません。

骨形態計測により石灰化速度や骨形成率といった動的パラメータを求めるためには、実験動物の骨を採取する前に、間隔をあけて2回、骨標識剤(蛍光Caキレート剤)の投与が必要です。

よく使われるのは、カルセインと抗生物質であるテトラサイクリンです。カルセインは緑色、テトラサイクリンは黄色の蛍光として観察されます。

実験動物に対しては、蛍光強度が強く褪色しにくいカルセインが使いやすいといえますが、ヒトにおいては毒性が確認されていないため、臨床ではテトラサイクリンだけが使われています。

2回の骨標識剤の投与スケジュールは、動物種、月齢により、また、病態モデル動物の場合はどのような骨への影響が予想されるか、あるいは骨の代謝回転が速いか遅いか等を考慮したうえで、経験的に調整しています。

カルセインとテトラサイクリンの投与スケジュール、投与量、調製方法などは、どうぞお問い合わせください。動物の条件に応じた投与方法についてご相談させていただきます。

1-2.骨のトリミング

骨塩量や骨密度の測定など、完全なパーツとしての骨が必要な場合はそのままで結構です。

組織標本の場合は、より良い固定のために、可能な限りサンプルを小さく切断するか、標本を作りたい部分から離れたところに割を入れます。私たちは、歯科用ハンドモーターの切断用ダイアモンドディスクを利用しています。

1-3.骨サンプルの固定

情報量の多い美しい組織標本のために、固定は大変重要なステップです。

骨組織のボリュームの25倍量を目安にした、70%エタノールもしくは10%中性緩衝ホルマリンに浸漬してください。ただし、少なくとも始めの3日間は、毎日固定液の交換と、ときどきの転倒混和を実施してください。これは、骨組織からの水分や脂肪分によって、固定液の濃度が低下するためです。

大きさにもよりますが目安として、割のはいったラットの骨なら3日間、切断されていないラットの長管骨ならば7日間で、ほぼ固定されるようです。

力学試験用の骨は、固定せず、軟組織をできるだけ除去したのち、冷凍保存します。

なお、実験の目的によっては、固定方法が異なる場合があります。詳細条件につきましては、検討内容毎にご相談させていただきます。

2.骨組織標本作製

骨組織および細胞からなるさまざまな情報を得るためには、骨組織標本作製後、形態観察や骨形態計測を行います。

これらは、骨の代謝機能を評価する際には必要不可欠であり、高度な技術が要求されます。骨組織標本作製は、脱灰標本と非脱灰標本に分けられますが、観察しやすい良い標本を作製することは、的確な情報を得るために必要です。

2-1.脱灰標本作製

脱灰は酸による脱灰とEDTA(中性脱灰)による脱灰が用いられます。目的に応じてそれぞれ使い分けが必要となります。

2-2.非脱灰標本作製

非脱灰標本作製フロー

非脱灰標本は硬組織に近い硬度の樹脂で包埋することで、研磨もしくは薄切時の物理的な破壊を出来るだけ小さくして切片を作製します。

包埋用樹脂は、研磨標本作製においてはMMA(Methylmethacrylate)樹脂が、薄切標本作製では、MMA樹脂やGMA(Glycolmethacrylate) 樹脂が用いられます。

MMA樹脂

【図1】

Villanueva Goldner stainを施した標本

  • MMA樹脂包埋 V.Goldner染色(マウス脛骨200倍)
  • 石灰化骨(黄緑色)
  • 類骨(赤色)

骨形態計測を行うための標本としては、組織片をVillanueva bone stain(以下、V bone stain)液にて前染色後、MMA樹脂包埋し、5~7μm程度に薄切したものやMMA樹脂包埋し薄切後、Villanueva Goldner stain(以下、V.Goldner stain)を施した標本(図1)が多く用いられています。

これらの標本は、石灰化骨と未石灰化骨を色分け出来る(V.Goldner stain)ことや、同一標本で静的パラメータと動的パラメータ(カルセインやテトラサイクリンの取り込み)の計測が可能(V.bone stain) であるため、骨組織形態の観察及び計測に有用です。

GMA樹脂

【図2】

Villanueva Goldner stain標本

  • GMA樹脂包埋 V.Goldner染色(マウス脛骨200倍)
  • 石灰化骨(青緑色)
  • 類骨(赤色)

GMA樹脂はMMA樹脂に比較して若干硬度が足りないのですが、重合熱の発生が少なく、酵素染色が可能です。

酵素染色のためには、GMA樹脂包埋は全ての工程を低温(冷蔵庫内)で行います。さらに慎重を期するときは、検体摘出後から直ちに70%冷アルコールに保存して固定・脱水・脱脂を行います。骨芽細胞特異的なアルカリフォスファターゼ(ALP/Alkaline Phosphatase)染色や破骨細胞特異的酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP/Tartrate Resistance Acid Phosphatase)染色標本は、GMA樹脂ブロックを3μmに薄切し、アゾ色素法にて作製します。

その他にもGMA樹脂は、トルイジン・ブルー染色標本やV.Goldner stain標本(図2)を作製し、骨形態の観察及び骨形態計測に用いることができます。トルイジン・ブルー染色標本はMMA樹脂包埋V.bone stain標本と同じく同一標本で静的パラメータと動的パラメータの計測が可能です。

3.骨形態計測

骨の代謝機能を評価する手段の一つとして骨形態計測があります。非脱灰薄切標本を用いて、骨構造に関するパラメータ(海綿骨量、骨梁幅、骨梁数など)、骨形成に関するパラメータ(類骨面、骨芽細胞面、骨石灰化面、石灰化速度など)、骨吸収に関するパラメータ(骨吸収面、破骨細胞数など)を計測します。

骨形態計測に用いられる部位は、脛骨近位部、大腿骨遠位部、腰椎が一般的です。

骨形成(骨芽細胞機能)について確実な情報を得るためには、検体採取の前に骨標識(カルセイン、テトラサイクリン)を行います。骨芽細胞が骨を形成する機能には、骨基質蛋白の産生と類骨へのミネラル沈着(石灰化)があります。骨標識剤はCaキレート剤ですから、観察される蛍光のラインは、標識剤が投与された時点でのその動物の骨の石灰化前線です。

骨標識は、カルセインとテトラサイクリン又はカルセインを2回投与します。

カルセインとテトラサイクリンの投与間隔を4日から7日程度とし、その間隔の間にどれだけ骨が形成されたかを蛍光顕微鏡にて2本の蛍光標識された石灰化前線の間隔を計測することにより石灰化速度が算出されます。

骨形態計測で骨の代謝機能を的確に評価する際、計測しやすい綺麗な組織標本が重要であることは言うまでもありません。そのためには、検体採取後の固定は最も重要なステップです。

4.骨構造解析

従来、骨構造解析は非脱灰薄切標本を骨形態計測することにより求められ、その有用性は先に述べた通りです。但し、標本作製や評価手技には熟練と時間を要することや、微細構造の破壊(作製技術の限界)が回避できない等の難点があることも否めません。

近年、骨の微細構造を非破壊的に比較的簡便に観察できる方法として、高分解能マイクロフォーカスX線CTスキャナー(マイクロCT)が開発され、骨構造解析に応用され、多く用いられるようになりました。

我々が使用しているマイクロCT装置を用いることにより、摘出した骨の前処理を特に必要とせず、非破壊的に骨の内部構造を短時間で観察・計測することが可能です。また、観察が終了した骨は硬組織標本作製に、利用することもできます。

4-1.マイクロCTによる骨構造解析の内容

  • 透視画像の撮影(骨全体)
  • 断層画像の撮影(2次元画像)
  • 任意の断層面における海綿骨の体積骨密度の測定
  • 多重断層画像からの3次元画像構築
  • Node-strut法、Star Volume法等を用いた2次元、3次元画像解析による海綿骨構造の定量解析

最近、骨強度に関連する因子として骨密度に加え骨構造(骨梁構造)が注目されている中、マイクロCTによる骨の3次元断層像を基にした海綿骨の3次元微細構造解析法は有用な評価法となってきております。

以下に、最新の技術として、マイクロCTから得られた3次元画像に基づいた骨構造パラメーターの算出について紹介します。

4-2.3次元骨梁構造計測法

4-2-1.骨組織切出し

計測対象とする骨組織を3次元画像処理により切出し分離する

  • 骨組織の3次元画像処理

    【図3】骨領域は、3領域に分離される
  • 骨組織の3次元画像処理

    【図4】Rat大腿骨皮質骨と管腔部
  • 骨組織の3次元画像処理

    【図5】Rat大腿骨海綿骨
  • 骨組織の3次元画像処理

    【図6】Rat大腿骨海綿骨Cube

4-2-2.海綿骨構造解析

分離した海綿骨について以下の構造パラメータを算出する

  • (1)骨組織体積:TV(Tissue Volume)(mm³)
  • (2)骨体積  :BV(Bone Volume)(mm³)
  • (3)骨表面積 :BS(Bone Surface)(mm²)
  • (4)骨表面積/体積比:BS/BV(1/mm)
  • (5)骨密度  :BV/TV(Bone Volume Fraction)(%)この他に皮質骨密度、全骨密度も算出される
  • (6)骨梁幅  :Tb.Th(Trabecular Thickness)(μm)
  • (7)骨梁数  :Tb.N(Trabecular Number)(1/mm)
  • (8)骨梁間隔 :Tb.Sp(Trabecular Separation)(μm)
  • (9)骨梁中心距離:Tb.Spac(Trabecular Spacing)(μm)

4-2-3.Node Strut

Rat大腿骨全海綿骨の骨格線

【図7】Rat大腿骨海綿骨の骨格線
  • (1)骨梁の骨格線の総長(Total Strut Length:TSL)を算出し骨格線を分類する。なお、3個以上の骨梁または幅の異なる骨梁間の結合点をNode(Nd)、他の骨梁と結合のない端点をTerminus(TM)、皮質骨との結合点をCtとする。
  • (2)骨格線の分類における結合点個数を求める。(N.Nd)(N.Tm)(N.Ct)
  • (3)骨格線の分類における個数、平均長さを求める。(N.NdNd)(NdNd)平均長 他
  • (4)分類毎にその総長を求めTSLに対する割合を算出。
  • (5)組織量に対する各Strutの長さを求める。

4-2-4.その他の構造評価指標

  • TBPf [Trabecular Bone Pattern factor]3次元空間上で骨梁の表面近傍体積の変化に対する表面積の変化量を計算する。凹面(板状)、凸面(棒状)の指標となる。
  • MIL [Mean Intercept Length]骨梁の構造的異方性の評価法
  • SMI [Stracture Model Index]骨梁の構造が理想的な板状のときをSMI=0、棒状のときをSMI=3として、その間の混合状態を0~3の間の値で指標化する。
  • その他骨梁構造の複雑さの指標としてフラクタル二次元、オイラー数、一次元ベッチ数など

5.骨密度測定

骨粗鬆症の診断を目的とした骨量測定法が種々開発され現在その主流を占めているのがDXA(Dual Energy X-ray Absorptiometry)法です。

マウスなどの小動物の骨密度測定を行う際にはDXA装置(DCS-600:アロカ社)を用い摘出骨(例えば大腿骨)をSXA(Single Energy X-ray Absorptiometry)法にて測定します。

骨全体を測定して骨塩量(mg)・骨密度(mg/cm²)を算出し、次に分割して骨端部、骨幹部等の部位別の解析も可能です。

この方法は、短時間で多数の検体を測定出来るため、ファーストスクリーニングとして用いられます。なお、検体が小さい場合は、装置の検出感度を考慮に入れて測定する必要があります。また、任意の部位における骨の体積密度(mg/cm³)を測定する場合には、密度既知のファントムを用いたマイクロCTによる骨密度解析を行います。

マイクロCTの骨密度解析は、DXAでは算出できない皮質骨・海綿骨やエナメル質・象牙質などを分離してそれぞれの体積骨密度が算出可能です。

6.骨力学測定

一般的には、ラット、イヌ、サル等の大腿骨・脛骨で3点曲げ試験、腰椎で圧縮試験が行われます.マウスの場合は、検体が小さいので大腿骨を用いて3点曲げ試験を行います。

測定は、検体を摘出後直ちに行うことが望ましいのですが、凍結保存して後日測定することも差し支えないとされています。但し、この場合、検体を乾燥させないこと、凍結融解を繰り返さないよう注意が必要です。

【図8】

(図8)マウス大腿骨の3点曲げ試験

マウス大腿骨の3点曲げ試験例

骨力学パラメータ:

最大荷重[N]

破断変位[mm]

剛性(stiffness)[N/mm]

破断エネルギー[N・mm]

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